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「痛みはないのに、赤ちゃんが産道を下りてくる圧迫感がある。おなかの張りもわかり、落ち着いていきむことができました」
硬膜外麻酔を使う
笑顔で体験を語る主婦(26)は先月23日、北里大学病院(神奈川県相模原市)で女児を出産した。初めての妊娠。喜びは大きかったが、悩みも深かった。「痛みに弱い私が、陣痛に耐えられるのか」。不安は募る一方。ストレスは、おなかの赤ちゃんに悪い影響を与えると聞いた。夫(28)に相談、硬膜外麻酔を使った分娩(ぶんべん)を選んだ。
子宮が収縮したり、子宮口が開いたりすることに伴うお産の痛みには脊髄(せきずい)の神経がかかわる。硬膜外麻酔は、子宮口が4、5センチ開いた時、背中に注射、脊髄の外側の空洞(硬膜外腔(くう))に細い管を通し、麻酔薬を入れ、痛みの経路を遮断する。日本では1980年代初めごろから導入された。
お産の間、母体が抱えるストレスが高まると、血圧上昇や血管収縮を招き、赤ちゃんに届く酸素が減ることもある。同病院産婦人科助教授の天野完さん(55)は、「痛みがないとストレスも減り、産後の回復も早い」と話す。
しかし、従来の方法は、痛みを感じる知覚神経だけでなく、運動神経も遮断する。そのため、いきむことが難しく、胎児が産道を下りる動きが鈍り、帝王切開や、鉗子(かんし)など器具を使う確率が高まる、と指摘されていた。
同病院では、局所麻酔薬と一緒に少量のオピオイド(医療用麻薬)を持続的に投与している。これだと、局所麻酔薬の濃度は従来の3分の1以下、帝王切開の5分の1で済み、運動神経は遮断されない。
同病院麻酔科講師の奥富俊之さん(45)は、「オピオイドを使う方法は欧米で一般的で帝王切開になる率も高まらない。いきめることで、主体的にお産ができる」と説明する。
国内で少ない実施
だが、国内で分娩に麻酔を使う施設はわずか。ほとんどが心疾患、妊娠中毒症、糖尿病などの場合に限る。厳重な管理をする麻薬を使う方法はさらに少ない。
背景にあるのは、医療スタッフ不足だ。同病院でも、事前に無痛分娩の日程を決め、薬や器具で陣痛を誘発し、日中に限っている。
情報不足による誤解もある。「おなかを痛めたから愛情がわく」「子どもの発育に影響はないか」。科学的な根拠はない言葉に傷つく女性もいる。
産科や麻酔科医らによる「分娩と麻酔研究会」会長を務める天野さんは「痛みのないお産は選択肢の一つ。産科や麻酔科の医療スタッフにも関心をもってもらいたい」と話している。
[麻酔を使った分娩] 「無痛分娩」「和痛分娩」などと呼ばれるが、明確な定義はない。硬膜外麻酔のほか、口から吸ったり静脈注射したりする麻酔に、医療用麻薬や鎮痛・鎮静剤を組み合わせて行う「バランス麻酔」や、産道や会陰部に注射して痛みをとる方法がある。
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